映画『デルス・ウザーラ』

goro3582004-09-01

学生時代、アルバイト先の上司が登山を教えてくれた。
口数少ない彼がぶっきらぼうに『デルス・ウザーラ』を薦めてくれた。
黒澤明監督が自殺未遂を経て、復帰の第一作目の映画だったのだが、マイナーすぎてレンタルビデオ屋さんにはない。タイミング良くNHKが放送してくれたお陰で観ることができた。
ロシア軍の地勢測量探検隊がウデヘの原生林に入り、次々と困難に遭遇する。そこで山の民であるデルス・ウザーラに出会い、現地案内を頼む。ロシア軍隊長(カピタンと呼ぶ)は、デルスが持つ山で生きる知恵と、自然と共生する美学に感服する。隊は幾たびも窮地に陥るが、デルスに救われる。後にカピタンはデルスに街で生活するように勧めるが・・・・。結末では、生きることの根源的な問いが重くのしかかってくる。生きる(LIVE)は邪悪(EVIL)と対なのだろうか、と。
東洋のウデヘの森の神秘的な美しさ、デルスの人間性に見入るカピタンの冷静な西洋人らしい観察力、人と自然との共生の難しさが絶妙に織り込まれて、いっぺんに引き込まれてしまった。
黒澤監督が生と対峙した凄みがあふれ出ている映画だと思う。
今でも好きな映画のナンバー1!
ミッドナイト・エクスプレス』『眺めの良い部屋』『コンタクト』も思い入れが強い映画なのだが、なんと言っても『デルス・ウザーラ』が僕の生きる原動力をみなぎらせてくれる最高の映画だ。
黒澤作品の特集が組まれる機会が多いが、この『デルス・ウザーラ』は取り上げられることが少ないのが残念だ。
アイデンティティーを確立しかけていたあの時期に、最高に感動する映画を観ることができたことに、そして、こんなイイ映画を薦めてくれた上司に感謝!!