カラスのお勤め

goro3582004-11-29

先日、近所の方が亡くなった。その2日前から近所でカラスが騒いでいた。
その様子に母親は不吉なものを感じ取っていた。予想通り危険状態にあった近所の方が亡くなった。
亡くなる前日に隣のおばさんが家に遊びに来ていた。庭にカラスがやってきたのを見て、そのおばさんは「嫌だね〜。私、カラス大嫌いだのさ。見つけたらいつも石投げて追い払うんだよ。」と言った。
僕はカラスは賢くて、古くから神と扱われてきたこと、そして不吉なことを知らせてくれるありがたい存在だと伝えた。石を投げるなんてやめた方が良いと諭した。
ちなみにそのおばさんが住んでいる家の前の持ち主は、猫嫌いだった。ある日野良猫を追い払おうとホウキを振り回して追いかけていたら、蹴つまずいて顔に刺し傷を負った。僕は子供心に猫の仕返しだと思ったものだ。
カラスはとかく嫌われている。不気味で汚い、そして不吉だと。
しかしカラスを飼っている人もいて、よく見るとなかなか愛らしいものだ。黒いのにも慣れる。
タレントのロンドンブーツの亮さんはかけだしの頃、怪我をしていたカラスを拾ってしばらく部屋で飼っていたそうだ。今の成功ぶりから考えるとカラスの恩返しか、亮さんの功徳になったのかと思う。
カラスはゴミを荒らすので嫌われるが、カラスの言い分だってあるだろう。「人間は汚いゴミを平気で外に出すなぁ。」なんて。そのくせにそのゴミに集まってくるカラスだけが憎いなんてのも人間の勝手さなんだよなぁ。ゴミ処分場にカラスが集まる光景。それが、鶴だったらどうだろう?「掃き溜めに鶴」なんて冗談ではなくて。鶴は極端に不釣合いだ。残念ながらゴミ処分場はやっぱりカラスの役目なのだ。最近ではトンビ、そしてカモメも加わっている。カラスだけでは間に合わないから、なのかもしれない。人間が犯しているゴミの排出という罪をカラスが一所懸命に処理しているだけのことなのだ。
そしてカラスは不吉を知らせてくれるのだが、勘違いされては困る(カラスの気持ち代弁モード)。
「不吉なことが起きるよ」という、身分をわきまえて請け負っている彼らの親切心の表れなのかもしれない。決してカラスが不吉なことを起こすのではないのだ。だったら、人は素直にカラスに「お役目ご苦労様。ありがとう。」と感謝すると良いのではないか。
アイヌの神話の中にカラスに感謝する話があった。
〜船で海に漁に出た男が深い霧に包まれて帰る方角を見失った。どんどん沖に流されて行く。心細くなった男の頭上にカラスが現れた。カラスは海の鳥ではなく陸の鳥。カラスは男に何かを教えようとしている様子。そこで男はカラスが飛ぶ方向に従って船を漕いで、無事に元の浜へ戻ることができた。〜
これは男がカラスを神として受け入れた結果、助かったということに他ならない。
もしこれが、先のカラス嫌いのおばさんだったら、「不吉なカラスめ。私が死ぬのを待っているのか。あっちへ行け!」なんて罵って追い払ってしまい、さらに遠く沖へ流されていたかもしれない。