ごろ父の旅行記

4月13日に釧路を発って、仙台へ旅行に行き昨日17日に帰って来た。
激安企画旅行パックで、父の高校時代の友人が「ニイ、一緒に行くべや」と誘ってきたのだ。
父はニイと呼ばれている。
その友人とはS坂さん。
10年ほど前にごろが企画したイベントに父がS坂さんを誘って参加したことがある。
酔っ払ってアレコレ話していると、S坂さんはビックリしてこう言った。
「おいおい、息子さんはニイとおんなじ冗談言うんだな!」
う〜ん、顔だけじゃなくて、冗談までそっくりなんだそうだ。




その激安旅行パック。
苫小牧からフェリーで仙台に入り、ガイドなど付かず、めいめい勝手に観光して2泊して、フェリーで苫小牧に着いたら解散というテキトーなもの。
S坂さんは相当古い年代ものの外車に乗っている。
運転が好きだというので、彼が釧路から苫小牧まで運転すると言うのだが、何かにあたった既往歴があるらしく、首が常に左右に小刻みにプルプル震えている。
出発の13日は異常に発達した低気圧のせいで強風が吹き荒れて吹雪、海は5〜7mの高波。
そんな中、70才の2人は出かけて行った。
S坂さんはいろんな病気を持っていて、「いつ死んでもイイ」と本人も自覚しているので、父をちょうどイイお供に預けたようなものだ。
暴風、吹雪で峠が通行止めになるか、フェリーも欠航するかで、引き返してくるんだろうと思っていたら、とうとうその日は何の連絡もなく過ぎた。
ごろ母も「電話1本もしてくるような人じゃないから何かあっても知らないよ。」と知らん振り。
ニュースを見ると、ずっと仙台も寒くて最高気温が9度と、釧路と変わらない気温で、桜なんか咲いていないのだとか・・・。
うるさい父がいなくなって、晴れ晴れとしたイイ顔でしゃべっていた。


それが16日の朝に父から家に電話があった。
無事だったらしい。
これからフェリーに乗る、着替えの服とお土産を入れてダンボール1箱を宅急便で送った、と言った。
なんと電話を入れることもお土産を買うなんてことも実に珍しい。
母も「コレは何かあるかもね」とつぶやいていた。
ちなみにS坂さんはごろ父以上に、旅行に出ても家族に電話もしないし、お土産なんぞ買ったこともないという猛者だ。


17日の午前11時に苫小牧に着くので、それから釧路に着くのは夜になるだろう。
母は夕方5時半に一人で夕食を済ませていた。(←早いっちゅうの!)
そこに父帰宅。
興味がなくて聞く気がない母に旅の顛末をしゃべり通したそうだ(^^;)


この激安ツアーに参加したのはジジババばっかりの27人。
苫小牧までの道中は強風で車は揺れるわ、運転者の首は揺れっぱなしだわで大変だったのだと。
年季モノの左ハンドル外車で、助手席に乗った父。
センターラインのボコボコをいっそ踏みながら走るのでうるさくてしょうがない。
見通しが悪くてもS坂さんは追い越しをかけようとひょこひょこはみ出すので「オレが見て、追い越しできそうなら教えてやっからよ!」といくら言っても聞かなかったのだと。
雪が舞う苫小牧でS坂さんはドライブ用のサンダルを履いたままだった。
父が「お前、靴を履き替えねぇのか?」と聞くと、「あ!何も考えてねがったや。なんもコレでイイべや。」
体重は45kgしかないガリガリの体で、足のサイズは24.5cm。靴を買おうとしても選ぶのが面倒くさいんだそうだ。
高波で大揺れが予想されるので、酔わないようにとしっかり酒を買い込んで二人はフェリーに乗り込んだ。
父は道中も酒を飲んでいたのかと思いきや、運転者を気遣って酒は控えていたようだ。
フェリー内では思う存分飲んだことだろう。
仙台は釧路と変わらないほどの寒さで雪が降っていた。もちろん桜なんか咲いていない。
ツアーにはガイドも付いていないので、どっこも出かけず、ホテルの部屋で2人でずっと飲んでいたのだと。
それでも1、2回、仙台駅を見に出かけたらしい。
そこで父は珍しいことにお土産を買った。
一切、家族にお土産なんか買わないというそんな姿を見て、父は何かを感じたらしい。
「同類を見るとひく」というあの現象だな。
ごろも自分以上に、人におべっか使う人間を見るとイヤな気持ちになる。
それでお土産なんかを買ってしまう暴挙に出たのだろう。


さて、何しに仙台まで行ったのか分からぬまま、フェリーで苫小牧に戻って来た2人。
とうとう激安ツアーに集まったメンバー同士の交流には加わろうとしなかったらしい。
S坂さんは温泉好きだと言っていたので帰りにどっか立ち寄り入浴でもしてくるかと思っていたらさにあらず。
目的地があったら一目散にそこに向かい、余計な用事などはすべて排除して、真っ直ぐに帰ってくるごろ父。
20数年間、通勤していてもずっと、家と会社の往復に限っていた。
今回も父は真っ直ぐ家に帰ると主張していたのだろう。
途中、S坂さんは3回ほど喫煙タイムと称して車を停めた。
「や〜や〜、家に帰ったらよ、タバコも吸えねぇべよ。」
「アレ?おめぇタバコ止められてるんだっけか?」
「あぁ、医者からタバコ吸ったらもう命の危険があるって言われてるから、おっかに見つかったらエライことだ。」
「で?酒は?」
「あぁダメだダメだ。それも怒られっちまう。」
「・・・・」
そんなアホな会話が帰り際になってやっと交わされたのだ。