チチョよ安らかに眠れ

goro3582004-12-29

今日、家の犬が死んだ。チチョリーナ17才。雑種。
我が家はずっと犬を飼ってきた。歴代5匹目で、4代目の♂犬ビックが11才の時に何者かによって小屋に入れられていたのがチチョリーナ。
17年前の12月、ビックが困った顔をして僕を見ているので行くと小屋に20センチくらいで目も開いていない赤ちゃん犬が入っていた。冷たくなっていたので慌てて家のストーブの前で温めてやった。
当時父は夜勤続きで朝4時頃に帰宅していた。家の中で世話をすることになった子犬は明け方に、便意をもよおして鳴く。そこに父が帰ってきて尻を突付いてやって便を取ってやる係だった。便が済むとミルク。哺乳ビンではうまく飲まないので父が指をくわえさせてミルクを伝わらせてやっていた。その頃話題だったのがイタリアのポルノ女優で国会議員のチチョリーナ。父はこの手がかかるメス犬にうれしそうに「チチョリーナ」と名付けた。
日本スピッツが混ざったチチョはわりと小型犬でしばらくは室内で飼っていた。しょっちゅう僕の部屋に連れ込んで一緒に寝ていた。友人の家やドライブにもよく連れて行った。可愛がりすぎたようでやがて、きかない(わがままな)犬になってしまって、人なれしなくなり近寄ってきた子供に噛み付いたり前科は10犯以上になった。外犬のビックが寂しそうにしていたので、やがて外に出して飼うようになった。
ビックはその1年後に死んだ。
家の前の空き地に犬を飼っていたことで、近所からの苦情を呼び、その空き地を買うことになった。犬を飼うために買った土地が、お陰で家庭菜園と車庫として役立っている。
チチョも元気で16才になった去年の8月14日、突如危篤に陥った。
痙攣を起こし、下痢を垂れ流し、吐いて、意識が無くなってしまった。
こんな急変は初めて見たが、年齢を考えると老衰かと考えて様子を見守った。
ご飯は受け付けなかったが、水は少し飲んだので小まめに飲ませた。
丸三日、危篤状態でいたが、四日目に首がすっかり曲がった状態で立ち上がり、ご飯を食った。
そこからチチョは奇跡的に回復していった。聞くと近所で数匹犬が死んだらしい。毒まんじゅうをばら撒いた奴がいるのではないかと噂になった。
しかしチチョの首は曲がったまま、ボケも進行し、歩くのもやっと。夜な夜な痛みか寂しさ、不安があるのか鳴いて僕たちを起こし続けた。近所迷惑も多分にかけてしまった。
真夜中に鳴き声をあげるチチョの所に行くと、ただ小屋の中で唸っていたり、鎖が絡まっていたり、自分の不自由な後ろ足で鎖を踏んでいたこともあった。
去年の今頃はさすがに冬は越せまいと思い、毎朝「チチョ生きてるか?」とのぞきこんでいた。それが無事冬を越してあれから1年半が経った。
今月に入り、チチョの鳴き声が頻繁になってきた。とうとう足が立たなくなって、水も飲まなくなり、ガラガラに痩せてしまった。近所さんたちも生かせているのがかえって可哀想だと言うので、最後の判断に至った。友人から犬の痛み止めの薬と、人間用の睡眠薬をもらって、昨夜飲ませた。それでも今朝はしゃっきり起きていた。朝ご飯と一緒にまた薬を飲ませた。やがて静かに眠りについたので父が小屋に入れた。
昼、父が見ると息が止まっていた。僕は夕方家に帰って小屋の中で冷たくなっているチチョをなでた。ぐっすり眠ったままの表情だった。
17年もありがとう、チチョ。ゆっくり眠るんだよ。